リウマチ Vol.41 No.2 indexに戻る

リウマチ Vol.41 No.2             
「膠原病の病像・予後の変貌とその要因 ──30年のあゆみと今後の展望──」
 
橋本博史
順天堂大学膠原病内科
 
会長講演

 Klempererが膠原病の概念を提唱してから50余年が経過し,21世紀を迎えた。この間の膠原病研究の進歩には目をみはるものがあり,とくに免疫学的手法や遺伝子工学,分子生物学的手法の導入は加速度的な進歩をもたらした。それに伴い,膠原病に含まれる多くの疾患の病像・予後は大きく変貌し,疾患概念も予後不良な疾患から慢性に経過する疾患へと変わってきた。一方,昭和44年に現順天堂大学名誉教授塩川優一先生によって【創】設された私どもの膠原病内科学教室は,20世紀最後の年である昨年30周年を迎えた。この間における当教室の知見を交え膠原病の病像・予後の変貌とその要因,今後の展望について述べる。

1.膠原病の病像・予後の変貌
 膠原病の中で予後の変貌が著しいのは全身性エリテマトーデス(SLE)である。著者らはこれまで各年代毎 ('70年代, '80年代, '90年代) にその検討結果を報告してきたが,いずれの年代も蝶形紅斑,ネフローゼ症候群などSLEの特徴的な臨床像の減少とともに予後の改善を認め,腎死の激減をみる。慢性関節リウマチ(RA)では,'90年代はそれ以前に比べ関節破壊の進行度の遅延がみられるが,死亡年齢の高齢化と悪性腫瘍による死因の増加がみられる。血管炎症候群においても予後の改善がみられるが,腎死の減少に代わり呼吸不全,感染症死の増加がみられる。

2.治療法の変遷
 SLEでは, 軽症例の増加がみられるものの依然として難治性病態が存在し,病態に応じた治療法の選択がうかがえる。 RAでは, '85年以降はDMARDsの選択肢の幅が広がっている。血管炎では,ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法の増加がみられる。

3.病像・予後の変貌の要因
 要因の一つに診断技術の進歩があげられる。とくに疾患や病態に特異的な各種抗核抗体をはじめとする自己抗体の発見と特異的測定法の開発は疾患や病態診断に大きな進歩をもたらした。また,免疫学的解析,形態学的解析,画像診断などの進歩は病態の早期把握と治療法の選択を可能とした。
 もう一つの要因に治療法の発達があげられる。非特異的療法ではあるがステロイドパルス療法やシクロフォスファミド間欠大量静注療法は膠原病の難治性活動性病態に適用され有用性が示されてきた。近年,治療薬の選択肢が増えているのはRAにおけるDMARDsで,関節破壊の進展遅延に寄与している。血漿交換療法では,いくつかの難治性病態に対して施行され救命されている症例が存在する。血液透析の発展は腎死の減少の要因の一つにあげられる。膠原病に含まれる多くの疾患が '72年以降厚生省(現厚生労働省)特定疾患に指定され調査研究班の設置と医療助成が行われ,これにより社会的認識が高められたことも大きく貢献している。

4.今後の展望
 膠原病に含まれる疾患は多因子性疾患で,その発症に遺伝的要因と環境因子が重視される。これまでいくつかの疾患感受性遺伝子の存在が報告されているが,感受性領域の全ゲノムにわたるマッピングが行われるものと思われる。環境因子ではレトロウイルスをはじめ多くの候補因子について検討されると考えられる。難治性病態ではその発症機序の解明とともに遺伝子治療を含む特異的,選択的治療法の開発が進められると考えられる。さらに遺伝子解析による薬剤の選択や副作用の予知も可能になると思われる。診断技術の進歩とともに軽症・不全型の症例の増加がみられるが,遺伝子多型解析を含めボーダーライン上の症例の解析が必要である。また,生命予後の改善とともに長期生存例の増加と高齢化がみられ,悪性腫瘍や虚血性心疾患など高齢者が抱える生活習慣病にも留意する必要がある。
(full paperを次号に掲載予定)
ページトップに戻る
Copyright Japan College of Rheumatology All rights reserved