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リウマチ Vol.40 No.6             
「医学生へのリウマチ学教育」 
 
佐々木 毅
 
Editorial

 リウマチ性疾患の診療においては内科,整形外科更にはリハビリテーション分野の連携が必須であり,リウマチを専門とする施設ではこの方向にむけて努力されていることと思われる。しかし,本学会に属していない医療従事者においてはこれがどれほど理解されているか疑問とされることもあり,難病である本分野の予後の改善を計る上での問題の一つとして指摘されている。

 これは内科,整形外科などという講座制に基づいて行われている現在の卒前医学教育体制により影響される部分が多いと考えられ,本誌において狩野庄吾,橋本信也先生はリウマチ学の教育体制の確立,ここでの本学会の役割の重要性を述べられている(リウマチ39(3):559,1999,40(3):644,2000)。そして平成13年度の日本リウマチ学会総会(橋本博史会長)ではこの点がワークショップとして取り上げられることとされている。医学生の教育を担う各大学ではすでに取り組んでいることと思われるが,学会として指針を出すことは影響が大きいので更なる推進が望まれるところである。

 リウマチ学の教育をどうするか,この問題の検討そして具現化は学会にとっても種々の点で有意義であろう。まず,リウマチ性疾患についてこれを専門としないであろう医療従事者,さらには市民にとっても理解しやすくなることがあげられる。私共の大学である学生に「本分野の診療領域は一見,似た臨床所見を呈する疾患が多いのでわかりにくい」と評され教育方法を再考させられたことがあった。又,専門医以外の医療従事者より「リウマチ,膠原病はわからない,恐ろしい,とにかく専門医のところに」ともしばしばと聞かれた。しかし,交通の利便,痛み,機能障害他の種々の要因をかかえるリウマチ患者は常に専門施設での診療を受けるわけではない。リウマチ以外の身体異常の診察も必要とする場合も多い。このためにACRではリウマチ患者の適切な診療のためには専門医,一般医,患者の良い関係の構築をすべきであると指摘している。わが国にとっても今後,病診連携はさらに深まる方向にある。リウマチはわかりにくい,だから敬遠したいとする風潮を変える必要があることは自明であるが,ここにおいて体系的なリウマチ教育は医学生全体に本分野への理解をより深めると期待できるし,学会としても更に取り組むべき事項と思われる。これらの点を各々の立場より討論するだけでもリウマチをよく理解しうる教育の方法の向上に役立つであろう。

 また「本分野の疾患は面白そうだ,やりがいがありそうだが複雑すぎ,用語も多すぎるのでわからない,各研究の位置付けも診療の全体像よりみてもわかりにくい」等の感想が学生,医療関係者より聞かれるが基礎より含めた体系的なリウマチ学の教育はこの点でも貢献できるし,結果的に本分野により興味をもたせられ,理解の深まり,更には学会員の増加につながる可能性が出てくる。

 ここでリウマチ学の教育体系というと診療が中心の教育となると思われる。最今の医学教育の流れは「卒業時(国試時)には実践でも対応しうる力の養成を」だからである。多くの他分野のカリキュラムではこの点が強調されているし,臨床をあずかる立場より指針を作成すればそのような方向性は容易に想定される。実際に臨床での対応法が基本になることも確かであろう。しかし医学生のリウマチ学の教育ではup to dateの事柄のみならず疾患の基盤にあるものを理解しうる教育も強調して欲しいと思う。本分野での診療では1ないし2個など特定の指標だけでは診断も治療方針も決定することが困難であること,同じ疾患名でも病態の発現様式,副作用などが各個人で著しく異なるのでマニュアルはあくまで指針であり,診療においては各個人の病態を常に意識した総合的な見地よりの判断が必要であるためである。また難治性である本分野の疾患の解決を計るためにもこの姿勢の育成が力になると思われる。

 リウマチ性疾患では克服すべき問題点が多いが,免疫学の進歩,世界中の研究者のチャレンジにもかかわらず免疫異常を基盤とすると考えられるリウマチ性疾患の本態をとらえることにはいまだ成功せず,根治的治療の開発にも届いていない。しかし同時に魅力的なテーマも多い。ここでは基礎にいる研究者,臨床にいる研究者,いずれも各々の立場を生かした特有の切り込み方を行う必要があろうが,このような活動が医学生にもわかりやすく呈示できれば,この面よりもリウマチ分野により多くの若い人材の参加が望めようし,その育成も充分に期待しえると思われる。

 2,3年前のACRミーテイングでたまたま隣でランチをとっていたrheumatologistと話をした。30台であるが数年前に開業し臨床に忙しいという。私達のパルボB19の話だったと思うが基礎的な問題まで実によく理解しており,質問も核心をつき,示唆的である部分も多かった。感心して別れ際に「開業し,臨床の問題だけでも忙しいのによく勉強しているね」と話したら「自分の仕事をする上でいつも勉強が必要なのだ。有難う」と恥ずかしそうに答えた。個人の資質の部分もあろうが,アメリカのリウマチ学教育の姿勢を反映するものかと感じ入ったことであった。
 

著者紹介
 1967年 東北大医学部卒業
 1970年 同大細菌学 研究生
 1973年 同大第二内科 助手
 1982年 ハーバード大小児病院Children's Hospital Medical Center免疫学部門 リサーチフェロー 1990年 東北大第二内科 助教授
 1993年 同大臨床検査診断学 教授
 1998年 同大免疫・血液病制御学(第二内科) 教授(現職)

主要研究テーマ:
リウマチ性疾患発現とウイルス感染,抗DNA抗体,抗血管内皮細胞自己抗体とリウマチ性疾患


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