T.アミロイド症とリウマチ性疾患
いろいろなアミロイド症が知られている。原発性のアミロイドーシスと分類されるものや血液透析患者で認められる透析アミロイドーシスなどにおいて関節症状を呈することもよく知られている。しかし,ここでは逆にリウマチ性疾患でアミロイド症を呈する症例いわゆる二次性アミロイドーシス(続発性アミロイドーシスと同義)につき概説する。本疾患はAA蛋白といわれる蛋白の諸臓器の沈着により,臓器不全を呈するといった特徴を持つ。しかも症例は増加傾向にあり,原疾患の予後を規定する因子になりかねないなど,その重要性が認識されてきている↑1〜3)↑。しかし,そのアミロイド蛋白の沈着機序は不明で,治療指針も確立されておらず,さらなる研究の進歩が望まれている。また,沈着機序に関してはアルツハイマー病との類似点も指摘されており,学問的にも興味の多いところとなっている。
1.アミロイドとは
Virchowがエオシン好性の難溶性の繊維蛋白で細胞外に沈着したものを澱粉様物質と名付けたものがアミロイドである。その特徴は表1に示した。近年沈着したアミロイド蛋白の分析が進み,表2に示したような多彩なアミロイド症が分類されるようになった。前述のごとく,二次性アミロイドーシスはAA蛋白の沈着するものである。
沈着するアミロイド蛋白の前駆物質SAA(serum amyloid A)は血清中で104個のアミノ酸からなる,分子量12000の蛋白である。血清中ではHDL(high
density lipoprotein)3蛋白と結合している(アポリポ蛋白として)。二次性アミロイドーシスはSAAの104個のアミノ酸が,蛋白分解を受けN末側の73個のアミノ酸となったA蛋白が沈着していることになる。SAAの産生はサイトカイン依存性で主にIL-1,IL-6,TNFにより肝で急性期反応物質として産生される↑4〜6)↑。肝以外でも炎症時のマクロファージ(Mφ)でも産生される。ヒト脳,滑膜↑7)↑でも炎症時にSAAのmRNAが検出されるとの報告もある。
2.アミロイドを構成する他の成分
いくつかの成分がアミロイドに共通して共沈着している。SAP(P蛋白),アポリポ蛋白E(アポE),へパラン硫酸プロテオグリカン(HSGP)が一般的に知られている。その他ラミニンが認められたり,アルツハイマー病ではα1アンチトリプシン,タウ蛋白などの共沈着も認められる。
1) SAP(serum amyloid P component,P蛋白)
可溶性で血清蛋白のα分画に存在する5量体の蛋白である。電顕で5角形(pentagon)にみえるのでP蛋白と命名された。分子量は25万で,CRPとはアミノ酸配列で50―70%の相同性があり,酷似しているためCRP同様ペントラキシン類に分類される。肝で合成される。しかし,ヒトでは急性期反応物質ではないといった,CRPとの相異(マウスとはこの点異なる)がある。単量体の分子量は約25,000で,Ca結合蛋白である。アミロイド沈着にanchorとして重要なのか否かなど機能は不明である。
2) アポリポ蛋白E(アポE)
アポEの対立遺伝子はある種のアルツハイマー病と連鎖不平衡にある。しかし,二次性アミロイドーシスとアポEの対立遺伝子との関連は明らかでない。シャペロンとしてAA蛋白沈着に関与するとの考えもあるが,意義は不明である。
3) へパラン硫酸プロテオグリカン(HSGP)
基底膜の構成成分である。他の蛋白と同じように沈着意義は不明である。
3.なぜアミロイドーシスになるか?
沈着するものがSAAの断片であることは明白である。したがって,SAAの産生過多,異常,クリアランスの異常,共沈着する他の物質の影響などが考えられる。沈着機序の概要を図1に示した↑8,9)↑。
1) 産生過多
AA蛋白の前駆物質つまり血清中のSAA濃度の高値持続例で二次性アミロイドーシス発症例が多いことが予測される。RAで炎症反応高値例で,つまり活動性の高い症例で産生されるSAAが多いとの報告もある。しかし,実際にはCRPとSAAは通常正の相関をしており,活動性高値即アミロイドになりやすいとはいえない。アミロイド発症前の期間も平均7―10年以上といわれているが,RA発症早期(2年くらい)でのアミロイド発症例も散見され,単にSAA産生量のみの問題とはいいがたい。SAA高値だけのみならず,質的な問題も関与すると思われる。
2) SAAの質的問題
@) アイソタイプの問題
ヒトではSAAは急性期反応物質である。産生される蛋白としてSAA1,2,4と3種類が知られている。病変部にはSAA1とSAA2由来のアミロイド線維が沈着している。SAA4はHDLの構造蛋白であり,急性期反応物質としての変動はない。さらにSAA1にはSAAα,β,γの3種類のアイソタイプの存在がわかっている。SAA1αとSAA1γは52番目のアミノ酸でvalineとalanineとの違いだけである(後述で遺伝子多型が関連)。この違いが局所への沈着に関与するのか? 沈着後のアミロイド繊維の溶解を困難にしているのか否かなど不明である。SAA1γ蛋白産生量が特別に多いのか? 炎症反応の程度で産生に違いがあるのか?などが考えられている。
A) SAAの遺伝子(表3)↑10)↑
BabaらはSAAの遺伝子多型が二次性アミロイドーシス発症の危険因子の可能性を指摘した↑11)↑。つまり,SAA1γの表現型を持つ群でRAによるアミロイドーシス患者が多いと報告した。
Moriguchiらの報告でもγ/γの遺伝子型は4.8倍の危険率でアミロイドーシスになることが示された↑12)↑。さらにSAA1γアリル数が多いほどRAは早期にアミロイドーシスになることも明らかにされた。
この点はALよりAAアミロイドーシスが統計学的に本邦に多いことにも関連すると考えられる。SAA2遺伝子座の関連はなかった。
3) SAAの生体内での働き
SAAは急性期反応物質であるが,本来働きが何であるかはいまだ不明である。Pruzanskiらは分泌型のphospholipase
A2 TypeU(sPLA2)を活性化することを報告している↑13)↑。また単球,好中球の遊走,血管内皮細胞への接着を誘導する炎症のメディエーターの可能性も指摘されている↑14)↑。その際FPRL1(ヒトfMLP受容体の一つ)受容体との結合が重要ともされる↑15)↑。あるいは,細胞表面のRAGE(receptor
for advanced glycation end-products;genome database designation,
AGER)つまり,多数のリガンドと結合しうる免疫グロブリンスーパーファミリー分子がアミロイド沈着に重要な役割を果たしているとの報告も最近されており↑16)↑,本来の機能との関連が問題となる。また,RA滑膜細胞からのマトリックスメタロプロテアーゼの産生誘導↑17)↑,HDLが末梢から中枢へコレステロールを運搬する担体であることから,SAAもコレステロール代謝に関与していることなども指摘されている。その他血小板や好中球を介しての免疫抑制作用も注目される。
4) その他
SAAからAAへの過程つまり蛋白分解酵素による問題,SAAのクリアランスの障害の有無なども検討されている。またこの際,Mφの役割が重要との説もある。さらに,動物レベルでは単一因子とはいいがたいまでもアミロイド促進因子(AEF)の存在が知られていたり,マウスでもSAPがアミロイド蛋白の蓄積を抑制するとの説もあり↑18)↑,未解決の問題が山積している。
U.二次性アミロイドーシス
二次性アミロイドーシスは慢性炎症性疾患に続発しAA蛋白が沈着するものである。基礎疾患として報告されたものを表4に示したが多彩である。その主たる基礎疾患は約20年前は感染症であった。しかし最近はRAに続発するものが増加している↑19,20)↑。
1.診 断
腎障害や下痢を主体とした消化器症状で,推測がついたり,血清中の前駆物質であるSAA高値持続が認められるとアミロイドーシスを疑うことになるが,確定診断は組織診断である。
1) 組織診断──どの部位がよいか?
奥田らは生検可能かつ偽陰性の少ない臓器として消化管,とくに十二指腸を推奨している↑21)↑。二次性アミロイドーシスは全身性の沈着症であるが腎,直腸,皮膚,唾液腺などに比べると上部消化管の検索は偽陰性率が低い。また,腎生検などに比べると,簡便で安全性も高い。
2) 組織が得られなかったとき──SAPのアイソトープ検査
SAPがアミロイド繊維と結合する特徴を生かして,↑123↑I-SAPシンチグラムがとくに早期診断に有用とされる↑22)↑。本邦では今一歩の普及率である。
2.症 状
アミロイド蛋白がいつから沈着しているかを正確に診断することはできない。したがって,二次性アミロイドーシスと組織診断された(生検ないし剖検で)症例の症状をレトロスペクティブに調べるしかない。臨床的に問題となるのは主に消化器,腎,心症状である。
1) 消化器症状
他のアミロイドーシス同様,AAアミロイドーシスでも上腹部不快感,難治性下痢,交替制便通異常,下血などを呈する↑23)↑。一般に上部消化管の粘膜筋板と固有層にAA蛋白が沈着して悪心などの症状が起きると考えられる。アミロイド沈着により,血管壁は脆弱となり,血管腔は狭小化するため虚血による潰瘍や梗塞となり,下血などが起きる。腸管平滑筋へのアミロイド沈着は血管もしくはその周囲以外にもアウエルバッハ神経叢へのAA蛋白沈着のために自律神経が侵され腸管運動障害が起きるともされる。粘膜固有層の沈着が多い例では吸収不良症候群も呈する↑24)↑。さらに麻痺性腸閉塞となる例も認められる。
消化管検索では内視鏡所見として特徴的なものはない。血管透見像,潰瘍(不整型,縦走),介在粘膜の出血斑,瀰漫性の発赤など非特異的であり,かつ多彩でもある↑25)↑。少なくとも通常の止痢剤で改善しないような下痢が出現したら上部,ないし下部の消化管検索をする必要がある。
2) 腎障害
蛋白尿でアミロイドーシスに気が付くことがある。RAでは時に蛋白尿を認めるが,その病因としていくつかのことが考えられる。薬剤性,他の膠原病の合併などである。しかし,腎障害の可能性のある薬剤を中止後も蛋白尿が持続する症例や,上部消化管でアミロイドの沈着が証明されている症例は腎生検ができなくてもアミロイド腎と考えるのが妥当である。アミロイドーシスの確定診断後速やかに腎不全に進行することが多い。概してRAでは長期罹病に加え,PSL使用例も多く,筋肉量が少ないためクレアチニン値は過小評価できない。しかも,二次性アミロイドーシスでは腎症のみならず,心アミロイドーシスを伴っているため,心不全,不整脈例などが多く,肺水腫などの溢水が容易に起きうると考えてよい。また,消化管アミロイドーシスもあるため,下痢などによる脱水も起こりやすく,容易に増悪しうると考えた方がよい。
3) 心症状
心電図検査で肢誘導低電位差,V↓1-3↓誘導のQSパターン,左軸変異,心房細動,刺激伝導障害がみられる↑26)↑。心エコーでは心室や心室中隔後壁の肥厚などがみられ,心筋のsparkling像などが特徴的とされる。
二次性アミロイドーシスでは甲状腺,肝にAA蛋白が沈着することも,剖検例では高率にみられる。しかし,肝不全などの報告はまれである。
3.治 療
1) 総 論
RAに続発する二次性アミロイドーシスの特異的な治療法はないといわざるを得ない。一般的に,a. アミロイドーシスの沈着蛋白がいつから沈着し始めたのかよくわからない,b.
沈着したAA蛋白を除去する有効な手だてがない,c. 沈着アミロイド蛋白の前駆物質である血清アミロイドA蛋白(SAA)を低値にすることがアミロイドドーシスの進行を抑制することになるのか不明であるといった問題点が考えられる。アミロイドーシスの本当の意味での病因や,いつから発症したかなどが明らかでないために,アミロイドーシスによると思われる症状が出現したとき,あるいは診断が可能であったときに障害臓器の対症療法をすることになる↑27)↑。
2) 沈着したアミロイド蛋白の除去
@) DMSO(dimethyl sulfoxide)
in vitroで蛋白凝集阻止能を持つDMSOは,一時抗リウマチ薬として使用されたことがある。沈着アミロイドを溶解する作用が期待されているが効果としてのevidenceはない。DMSO5―6g/日を蒸留水20ml位で溶かし↑28)↑,分3で内服させるか,外用で皮膚に塗布させる。においが強く,未承認でもあり使用には慎重でありたい。
A) コルヒチン
抗炎症作用があり,アミロイドーシスのモデルマウスで有効との報告がある。家族性地中海熱の二次性アミロイドーシスによる蛋白尿を軽減させたとの報告がある。本邦では二次性アミロイドーシスに対し単独使用での有効例の報告がなく,時に副腎皮質ホルモン,たとえばprednisolone(PSL)との併用で有効との報告が散見される程度である。
B) 血液浄化法―血漿交換
沈着したAA蛋白は難溶性といわれるが,動的平衡にあるとの説もある。したがって,血漿交換あるいは二重膜濾過などの血液浄化法で,沈着したAA蛋白が再溶出し,沈着臓器から減少する可能性がある。
とくに,DMSOとの併用で有効であったとの報告がある。鈴木らはSAAや,DMSOで溶出したAA蛋白が,血漿交換で除去されることにより腎機能が改善したと考えられる例を報告している↑29)↑。
小関らも,二重膜濾過法により,濾過液中に相当量のSAAを確認している。腎症の改善が示唆された症例より,今後二重膜濾過法が有効な治療法となる可能性を呈示している↑30)↑。
3) 各臨床症状に対して
@) 消化器症状
一般に難治性の下痢には消化管の安静が必要である。禁食にして補液を十分にする。時にIVH管理とする。止痢剤に加えPSLの増量が有効な時がある。機序はよくわかっていない。通常はPSL20―30mg/日位で有効と思われる報告が多いようである↑31)↑。残念ながら,evidenceに基づいた治療とは現時点ではいえない。
PSLが真に有効か否か疑問を持たれる所以は,1. 消化器症状が治まると,必ずしも全例が消化器症状を繰り返すわけではない(消化管の検索を再検して沈着が減少していなくてもである),2.
無症候性のアミロイドーシス例が存在することなどからである。
検診で偶発的にAA蛋白の沈着が証明されても,症状を欠く例が少なからず認められる。したがって,AA蛋白の沈着のみならず,腸内細菌フローラの問題なども考慮する必要があるのかもしれない。
A) 腎障害
蛋白尿に対して当然のことながら,腎障害が出現しうるDMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)は使いにくい。したがって,副腎皮質ホルモン,たとえばPSLが治療の主体となる。大量(1日30mg/日以上)が有効か否かはデータがない。なぜなら,異常蛋白の沈着が病変の主体で,炎症像に乏しいことより,抗炎症薬が有効か疑問が残る。少なくとも,経過として極めて短時間で腎不全になる可能性があることに留意が必要。
利尿剤や吸着剤の炭素(クレメジン)の使用は,透析導入を遅らせるためにはやむをえない。しかし,臨床的には腎不全の程度の的確な判定と透析導入の判断を遅らせないことが肝要といわれる。RAでは長期罹病に加え,PSL使用例も多く,クレアチニン値は過小評価できない。さらに,心アミロイドーシスをも伴っていることが多く,心不全,不整脈例などの合併も多い。したがって容易に尿毒症としての症状が出現しやすいとの認識が重要である。
B) 血液浄化法
二次性アミロイドーシスでは,血液透析(hemodialysis, HD)開始時期↑32)↑は通常の腎不全より早期となることが多い。この点は近年糖尿病性腎不全で,クレアチニン8.0mg/dl以下で,しかも急速に腎機能不全が進行しHD療法に入る例が多いことに似ている。筆者らの成績でも血清クレアチニン5mg/dl以下でHD導入例の症例の方が長期透析可能であった↑33)↑。
この点急速な腎障害の進行度から,血清クレアチニン3.0mg/dlを越えるあたりから,内シャントを準備することも考慮する必要がある。シャントの作成は困難な場合がある。時に人工血管をも考慮する必要がある。
HD中もシャントに関するトラブルは多い。とくに低血圧になることが多く,しかも,アミロイドーシスでは自律神経障害が想定されており,血圧低下時の治療の反応はよくない。この点,血圧維持困難例では持続的血液濾過透析(continuous
hemodiafiltration, CHDF)など,1日24時間のCHDFにより,少量の血液量で,透析を図る方法もとられる↑34)↑。
欧米では心不全,低血圧などがみられる症例で水分バランスを重視した持続携帯式腹膜透析(continuous ambulatory
peritoneal dialysis, CAPD)で,比較的長期間の透析成功例の報告がある↑35)↑。
C) その他の症状に対して
心不全や,不整脈にはアミロイドーシスだからといって特別な治療法はない。また,時に甲状腺機能低下がみられるとされるが,これもホルモンの補充療法でよい。
4.経過と予後
二次性アミロイドーシスは本邦に多い疾患であるため,予後などに関する報告は日本に多い。AAアミロイドーシス合併RAの予後は治療法が確立されていない現在極めて不良といえる。米国でもGertzらは50%生存率2―4年としており↑20)↑,本邦では死因でもアミロイドーシスの増加が剖検輯報などでも指摘されている↑19)↑。自験例26例の検討では確定診断後死亡まで2―56カ月平均29.1±25.9カ月であった。正確にいつからAA蛋白が沈着したかを知ることは難しい。かかる背景を受け奥田,高杉らは定期的に上部消化管のスクリーニングを行い,内視鏡的にとくに十二指腸生検を施行している。その結果,新規のAAアミロイドーシス患者は8.7%で診断され,Tiitinennらの10.8%,黒田らの7.1%と同等と報告している↑21)↑。また,1990年代はアミロイドーシス診断後の7年生存率を61%としている。さらに,診断時の予後はアミロイドーシスによると考えられる症状を有する群が有意に不良であるとしている。
また,とくに腎障害を呈した群の予後は悪く,中野らも血液透析導入をエンドポイントとして生存表を計算すると,75%生存15カ月,50%42カ月で,とくに透析例の約75%は平均13カ月の透析期間で死亡していると報告している↑36)↑。われわれの検討では消化器症状先行群でも腎障害先行群でも予後に差はなく,ともにアミロイドーシス確定診断後の3年生存率は35.2%と極めて低率であった↑33)↑。図2に示したごとく,一般に消化器症状が先行し,下痢などの症状を繰り返しながら,腎障害が増悪すると考えられる。早期に血液透析が導入されれば,多少予後の改善が認められるのが現状と考える。
V.早期アミロイドーシス
早期アミロイドーシスという概念が真に正しいか否かは不明であるが,偶発的に消化管検索でAA蛋白の沈着が証明されたとき,あるいは臓器障害がそれほどcriticalでもない時期にどう対処すべきかという問題が残る。
教科書的には強力に抗炎症を図るのがよいとされている。たとえば,国内外でも原病の治療として,RAではcyclophosphamide(CYC)やメトトレキサート,中等量以上のPSLなどが有効であったとの報告が散見される。しかし,現在までevidenceがないこと,また二次性アミロイドーシスの死因として感染症も多いことから↑37)↑安易な免疫抑制療法では必ずしもQOLを改善することにはつながらないともいえる。現時点は個々の症例に適した治療の選択が最善と思われる。
W.終 わ り に
高齢化社会を迎え,アミロイド沈着症であるアルツハイマー病も今後増加すると考えられる。アルツハイマー病では巨大なAβの前駆体(βAPP)が蛋白分解を受け,アミノ酸約40個のペプチドとなったものが沈着する。このペプチドには補体依存性の炎症惹起性が認められる↑38)↑。また,前駆体からアミロイド以外のペプチドとして,アポトーシス誘導能を持つ物質が産生されることも明らかになってきている↑39)↑。
二次性アミロイドーシスにも他のアミロイド症の知見を踏まえた新たな視点の研究による機序解明と同時に,アミロイド蛋白沈着後を含めた新たな治療法の早期開発が望まれる。
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著者紹介
1975年 慶應義塾大医学部卒業
1979年 同大大学院医学研究科終了
〃 同大内科 助手
1980年 米国国立衛生研究所(L. C. I.) 訪問研究員 1982年 名古屋保健衛生大(現藤田保健衛生大)内科 講師
1989年 日本鋼管病院内科 上席医長
1991年 都立大塚病院リウマチ膠原病科 医長
2000年 同 部長(現職)
主要研究テーマ:自己抗体,補体
表 1 アミロイド蛋白の特徴
1. ヘマトキシリン・エオシン染色で均質な硝子様の好酸性物質
2. コンゴーレッド染色後,偏光による青リンゴ(緑)色陽性複屈折
3. 電子顕微鏡で線維構造。アミロイド細繊維(amyloid fibril,70-90A)
4. X線解析で逆平行βシート構造
5. P蛋白などの成分が共沈着
表 2 アミロイド蛋白の生化学的性質による分類
アミロイド蛋白前駆物質臨床分類
1.全身性アミロイドーシス
AL 免疫グロブリンL鎖 原発性アミロイド,多発性骨髄腫
AH 免疫グロブリンH鎖 原発性アミロイド,多発性骨髄腫
AA アポSAA 二次性アミロイドーシス,地中海熱
ATTR トランスチレチン 家族性アミロイド性多発性ニュウロパシー
老人性全身性アミロイドーシス
弧発性硝子体アミロイド
AGEL ゲルゾリン 家族性アミロイド性多発性ニュウロパシー
フィンランド人の格子状角膜ジストロフィー
AApoAI アポリポ蛋白AI 家族性アミロイド性多発性ニュウロパシー(Van Allen型)
Aβ2m β2ミクログロブリン 透析アミロイド
2.限局性アミロイドーシス
Aβ βAPP(アミロイド前駆体物質) アルツハイマー病,ダウン症候群
ACys シスタチンC 遺伝性アミロイドーシス随伴性脳出血(アイスランド人)
ACal カルシトニン 甲状腺髄様癌
AIAPP 島アミロイドポリペプチド インスリノーマ,U型糖尿病
AANF 心房性ナトリウム利尿因子 弧発性心房アミロイド
AScr スクラピー(プリオン)蛋白 クロイツフェルト・ヤコブ病
ゲルストマン症候群
AFibrin フィブリノーゲンα鎖 遺伝性腎アミロイド
ALys リゾチーム 遺伝性非神経障害性アミロイドーシス
表 3 ヒトSAA蛋白と遺伝子
遺伝子
新(旧)アミノ酸配列の相異
Exon3
52 57 72
SAA1. 1(SAA1α) Val Ala Gly
SAA1. 2(SAA1β) Ala Val Asp
SAA1. 3(SAA1γ) Ala Ala Gly
SAA1. 4(SAA1δ) Ala Val Gly
SAA1. 5(SAA1β) Ala Val
SAA2. 1(SAA2α) Ala Val Gly
SAA2. 2(SAA2β) Ala Val Gly
SAA4
表 4 二次性アミロイドーシスの基礎疾患
1.慢性感染症
結核,らい,気管支拡張症,慢性骨髄炎,広範な褥【創】
2.慢性炎症性疾患
慢性関節リウマチ,若年性関節リウマチ,潰瘍性大腸炎,ホジキン病,全身性エリテマトーデス
図 1 アミロイドの沈着機序
図 2 二次性アミロイドーシスの臨床経過
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