高度情報技術革命(IT)に伴う21世紀初頭の構造的な国際社会の一大変革期を迎え,日本リウマチ学会も大胆な改革を迫られていることは,多くの会員の共通認識である。これまでの学会の旧体質を打破し,日本リウマチ学会の改革路線をかねてから提唱しておられる越智隆弘教授が,このような時期に圧倒的多数の評議員の支持を受け理事に選出され,また,理事会ではほぼ全員の支持を受け,昨年理事長にご就任された意義は極めて大きい。
筆者も数年前から「日本リウマチ学会」のあり方に危機感を抱き,とくにプロフェッショナルなサイエンスを展開し,国際性豊かな若手人材の育成を緊急の課題として,学会の旧体質の改革プログラムについて,国内外の共通認識を有する方々と意見交換を重ねてきた。
その主な背景は2つ挙げられる。まず第1は,前述したように,「IT社会」のもたらす情報の質的転換と加速度的な量的増加である。とくに情報伝達の高速化は,例えて言えば,一夜にして「飛脚伝達」から「電話化社会」に変貌したにも等しい。実際,筆者のもとには,リアルタイムに数多くの情報が,世界各国からE-mailを通して集まってくる。この事は,逆に言えばインパクトのある情報を発信すれば,瞬時に世界中の研究者や企業に向って伝達されることを意味する。この状況は,サイエンスの基盤を強固なものにし,学会が情報発信の「基地」でなければ,国際的な競争社会から完全に取り残される事を意味する。
一方,もう一つの大きなインパクトは,ヒトゲノムプロジェクトの完成が間近に迫っている事である。この事実は,ポストヒトゲノムのプロジェクトとしてバイオインフォーマテックスという新しいサイエンスの分野をリウマチ学の分野においても大きなターゲットとして視野に入れる必要がある。
このような状況を考える時,サイエンスの情報発信の基地として,学会の「あり方」を真剣に考え,ドラスティックな改革を行なわないと,先駆者の血の滲むようなご尽力を礎として,世界的にみても最大級の規模にまで「成長」した日本リウマチ学会は,国際化社会の「孤児」になり下がってしまうであろう。ここ10年近く,米国リウマチ学会(ACR)の国際委員会やArthritis & Rheumatism等国際誌の編集委員の一人として,JCI等の数多くの先端的な研究リポートのレビューを通して,痛切に感じている事は,「日本リウマチ学会」の国際化へ向けた決定的な機構改革の立ち遅れである。
一方,中国や韓国を代表とするアジアのエネルギッシュな若手研究者達の台頭を目の当たりにすると,アジア地域のリーダーシップを緊急に確立することは,日本リウマチ学会の最も重要な任務の一つである。不幸な事に,これまでの理事会では,主要な関心の1つが「誰が学会長になるか」という,いわば「コップのなかの利権争い」にも似た低次元のものであったことは,多くの会員が知るところである。もちろん「学会長」というポストの重要性は否定するものではないが,学会長になることによって,なんらかの「利権」が生じているとすれば,学術集会の本来の目的と全く相容れないものである。いずれにせよ,最も大切な事は,「学会運営のしくみ」をどのように今日的な視点から提示するかにある。この基本的な議論抜きにした「学会長選出」のプロセスなど,不毛にして些細極まるとまで言える。
幸いにも,現執行部のほとんどのメンバーは,越智理事長の強固な改革路線と共通の認識を有している。我々に続く次世代の若手研究者のためにも,そして何よりも,種々のリウマチ性疾患に対峙して,毎日「痛み」と闘っている患者さんのために,基礎科学,臨床科学の双方から,本来の学会の「あるべき姿」を真剣に考え,速やかに改革プログラムを提示する必然性があろう。なぜならIT社会のサイエンスは,【創】造性とスピードを同時に要求される過酷なレースだからである。
著者紹介
1968年 三重大医学部卒業
1968年 虎ノ門病院研修医
1972年 自治医大血液研究所予防生態部門講師
1977年 カルフォルニア大サンディエゴ校リウマチ科研究員
1983年 東京女子医大リウマチ・痛風センター教授
1991年 聖マリアンナ医大教授
同大難病治療研究センター臨床遺伝部門長 1999年 同大難病治療研究センター長(現職)
主要研究テーマ:
リウマチ性疾患の成因と制御に関する臨床的・遺伝子医学的研究
学術賞:
1983年 日本リウマチ学会賞
1992年 日本チバガイギーリウマチ賞
1997年 ドイツ医学会・Carol Nachman賞
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