現在は過去の歴史の積み重ねの上にある。歴史には成功もあれば失敗もあり,消え去った事の中にも進歩に貢献した事実も多い。リウマチ学会が発足した40年前,我々が手にしていた手段は,サルチル酸,アスピリンとコーチゾンに過ぎなかった。当時まだ勢のあった結核などの感染症と低栄養は患者の生命予後を悪くしていた。1960年(昭35年)前後より金注射剤(ゾルガナールB)が導入され,緩解例が驚きで迎えられた。1965年(昭40年)以後,強力なNSAID<インドメサシンが開発導入されて,その強い抗炎症鎮痛作用が,次々と新しいNSAIDの開発に連り,金,クロノキン,ステロイド,NSAIDの併用治療が主流の治療となった。
現在,広く用いられているNSAIDの坐薬が使えるようになったのが1975年前後であった事を覚えている人も少ない位である。1980年以後は,ペニシラミン,経口金剤から最近のサラゾピリン,MTXまでDMARDの開発の連続であり,治療選択肢の多さは患者のみならず医師にとっても治療の多様性からの選択の自由を楽しむ現状である。人工関節の成績が安定し,広く行われるようになったのも1980年以後である。
あえてこういった歴史を研修講演に選んだのは,現在でも一般医は,10年前の治療にこだわっているのを見るにつけ,教育の重要性を痛感しているからである。10年間,新知識の吸収,実践を怠ると新しい治療は出来なくなり保守的に生きるものである。このため先進的な医療をしている主要病院の医師も常に10年前の治療の状況を想いおこしながら患者に当たってないと,一般医との間に溝が出来,これが基で患者の信頼を失うことを恐れるからである。 |