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リウマチ Vol.40 No.2

            
「ミレニアムプロジェクトとリウマチ学―画期的医薬品早期実用化を含む― 」
 
水 島   裕
聖マリアンナ医科大学名誉教授
 
特別講演-2

 21世紀の医学・医療の向上のためには,ヒトゲノム解析などのライフサイエンスの研究の発展が必須である。そのため通産省,文部省,厚生省,農林水産省,科学技術庁や科学技術会議は,ミレニアムプロジェクトとしてライフサイエンス研究の具体的な提案を行い,99年10月に首相がそのプロジェクトの最終方針を決定した。具体的には,第一がヒトゲノム研究で,オーダーメイド医療の実現とゲノム情報に基づく画期的新薬の開発,第二が再生医療として骨・血管などの再生医療の実現,第三が植物ゲノムの研究である。

 ヒトゲノム研究として,まず塩基配列の解析が第一である。これは現在全世界的に急ピッチで行われている。そのゲノムの中に疾患と関連が深い遺伝子を中心として約10万の有用遺伝子があり,その機能解明が大きな課題となる。次がSNPs(single nucleotide polymorphisms,1塩基多型)プロジェクトである。SNPsと病気や薬の反応性との関係を調べることにより,個々の人がどんな病気になりやすいか,薬の副作用が起こりやすいか,また薬をどのように投与すべきかなどがわかる,すなわちオーダーメイドの医療ができるようになると考えられる。

 シークエンスの解析,有用遺伝子の機能解明,SNPsプロジェクト,これらを実際の医療につなげるための情報科学であるバイオインフォーマティクスなどは,すでにがん・循環器などの分野で研究されている。また,薬物反応性遺伝子に関しては,抗がん薬・循環器薬でかなり研究されている。前者としては種々の発がん遺伝子,がん抑制遺伝子が見い出され,後者としてはβブロッカー,ワーファリン,プラバスタチンについて興味あるデータが得られている。この講演ではまずミレニアムプロジェクトを解説した後,上述のデータなどを紹介する。

 さて,上に述べたゲノム関連の研究のほぼ全てがリウマチ研究の対象となる。リウマチ学領域におけるゲノム関連研究により多くの疾患関連遺伝子・蛋白が見い出されると思われるが,この場合大きく分けてRA・膠原病の発症に関係するものと病変・病態を進展させるものに分けられよう。前者に関して確立しているものはほとんどないが,後者としてはTNF,IL-6などのサイトカインや接着因子とそれをコードする遺伝子があり,そのうち一部はすでに病変・病態研究ばかりでなく治療にも応用されている。また,転写因子も検討の対象になろう。この分野の研究は今後急速に進むであろう。

 次にSNPsプロジェクトであるが,RA・膠原病では,病変が多彩であり,また経過も大きく異なる。これにはおそらく疾患関連遺伝子のSNPsが大きく関係していよう。また,抗リウマチ薬を中心にかなりはっきりとした有効例,無効例が存在することがよく知られている。これもおそらく薬物反応性SNPsが関係しているので早急に検討しなければならない。これによりRA・膠原病診療におけるtailored medicineが確立するであろう。日本リウマチ学会としてもこれらのシステム作りに協力しなければならない。

 バイオ関連ミレニアムプロジェクトの他の大きな柱は再生医療である。RA・膠原病の治療においても骨・軟骨細胞の移植,免疫療法に伴う骨髄抑制防止のための血液幹細胞移植などの細胞療法・再生医療は将来の大きなテーマとなる。すでに一部外国で行われているので,その結果も紹介しよう。

 さて,ミレニアムプロジェクトの研究によって,おそらく多くのいわゆる善玉と悪玉の遺伝子・蛋白・細胞が発見されるであろう。これらのものが発見された場合,医療・産業への応用として次のアプローチがある。すなわち,ベクターの開発・製造,DNAチップの開発,ハイブリッド蛋白の作製,部位認識医薬の作製,ヒト化抗体の作製などであるが,多くは今後とも日本リウマチ学会で取り上げなくてはならない重要なテーマである。

 最後に,ミレニアムプロジェクトの一環となるわけだが,バイオ関連医薬品としてリウマチ学の分野ではエンブレルなどの画期的なものが次々と開発されるであろう。これらの医薬品の日本における早期承認は,リウマチ患者に大きな恩恵を与えるわけである。画期的医薬品の承認遅延の原因となっている日本における諸問題を検証し,開発が円滑に進む方向を探り,新薬開発のためのハイウエイセンターの設置,少なくともその趣旨が生かせる制度の構築を提言したい。
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