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日本リウマチ学会からのお知らせ

関節リウマチ治療中に発生するリンパ増殖性疾患/リンパ腫に関する日本リウマチ学会、日本血液学会、日本病理学会合意事項について


 ここ数年来、関節リウマチ(RA)治療中に発生するリンパ増殖性疾患(LPD)/リンパ腫に関して、発現数の増加やRA治療薬の影響が注目されております。実際に、関連学会や学術誌におけるRA関連のLPD/リンパ腫の報告数はここ数年来、増加していますが、発現件数を年度別にみると増加傾向はありません。一方、海外の疫学研究では、リンパ腫のリスクは、メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤が使用される以前と変わりないと報告されています。本邦におけるその患者数、発症率、背景因子など実態は明らかでなく、日本リウマチ学会で調査が始まったところです。

 RAをはじめ自己免疫疾患に対して免疫抑制薬治療中に発生するリンパ増殖性疾患は造血器・リンパ組織腫瘍のWHO分類(第4版、2008年)では「他の医原性免疫不全症関連リンパ増殖性疾患:other iatrogenic immunodeficiency-associated lymphoproliferative disorders」に分類されます。WHO分類第3版、2001年にはMTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)という分類がありましたが、第4版では、MTX-LPDや生物学的製剤などの治療中に発生するLPDを含む広い概念に改訂されています。

 一方、RA治療中に発生するリンパ増殖性疾患/リンパ腫は、リンパ節腫脹に加えて、全身症状や節外症状、特に口腔内・咽頭病変、肺病変、皮膚病変を呈する頻度が高いため、血液内科をはじめ様々な診療科を受診します。特に、ほとんどの症例で、血液内科医と病理診断医が診断や治療に関わります。その際に、MTXを投与中であれば、他の免疫抑制薬(生物学的製剤、カルシニューリン阻害薬、JAK阻害薬など)の併用の有無にかかわらずメトトレキサート(MTX)関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)という臨床診断あるいは病理診断がなされる機会が増加しています。また、MTXが過去に投与された患者においても、LPDが発症した場合でも、MTX-LPDと診断される場合があります。患者への説明の仕方によっては、LPDがMTXの副作用で発生したものと理解されるケースがあり、実際に訴訟や副作用救済の問題が診療現場で起きています。

 このような状況の中で、日本リウマチ学会はRA患者の治療経過中に発生するLPDの概念、診断、治療に関してリウマチ医、血液内科医、病理医が共通の認識をもって臨床の現場で対応できるためのコンセンサス作りを目的に、2017年1月9日に日本リウマチ学会、日本血液学会、日本病理学会の3学会の代表で合同意見交換会を持ちました。

 3学会合同意見交換会では、RA患者におけるリンパ増殖性疾患・リンパ腫の診断名、発生時の対応や予後に関する情報や各学会の立場について意見が交わされました。その結果、RA治療中に発生するリンパ増殖性疾患・リンパ腫については、患者数、人種差、病態、発生前の予兆、予後、退縮後のRA治療など、まだ不明な点が多いものの、現時点で3学会が合意できる点については公表し、今後も引き続き3学会合同で調査研究を進めていくことで一致しました。

 今回の3学会合意事項は現時点におけるエビデンスを踏まえて、3学会で検討した内容ですので、リンパ増殖性疾患・リンパ腫患者の診療に際し、参考にしていただければと思います。今後、調査研究が進み新たなエビデンスが明らかになれば内容が変更される可能性があります。

2017年10月
一般社団法人 日本リウマチ学会
理事長 山本一彦



3学会合意事項

  1. 関節リウマチ(RA)治療中に発生するリンパ腫/リンパ増殖性疾患(RA-リンパ腫/LPD)の発症にはimmunnosuppression / immunodysfuction が背景にあり、その原因には、加齢あるいは免疫老化(immunosenscence) 、RAの免疫異常や慢性炎症、遺伝的な要素に加えてMTXをはじめとする薬剤による免疫抑制がある。MTXを中止後に退縮する症例ではMTXの関与が疑われる。

  2. 現時点では、RA患者においてMTXを含む免疫抑制薬治療中にリンパ腫/リンパ増殖性疾患が発生した場合、医原性免疫不全関連リンパ増殖性疾患(iatrogenic immunodeficiency-associated LPD) あるいは免疫抑制薬関連リンパ増殖性疾患(immunosuppressive drug-associated LPD)と呼ぶことを推奨する。MTXや他の免疫抑制薬を中止しても退縮しない症例では、他の要因も関連している可能性がある。

  3. RA-リンパ腫/LPDの危険因子や前兆、退縮する症例としない症例の違い[e.g. 年齢、RA疾患活動性、病理組織(DLBCL/Hodgkin)、病期や部位(節外臓器or 全身)、リンパ球数や骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)]は明らかでないが、リウマチ学会で行っている前向きコホート研究の結果に加え、基礎的な研究の推進、LPDを発症した症例の背景や予後の調査を継続的に3学会が協力して進めていく必要がある。

  4. 今後の計画として、RA-リンパ腫/LPDの診断、治療に関して、全国のリウマチ医、血液内科医、病理医が共通の認識で対応できる3学会合同のステートメント/指針あるいはガイドラインを作成する。3学会意見交換会で合意した共通認識については、2017年日本リウマチ学会特別企画シンポジウムで発表する。中期的には、3学会の推薦メンバーで構成するワーキンググループを立ち上げ、1年をめどにガイドライン・指針・手引きを作成する。

2017年1月9日
一般社団法人日本リウマチ学会
一般社団法人日本血液学会
一般社団法人日本病理学会



メンバー

・ 日本病理学会
森井英一(大阪大学病理病態学教授、学会理事、医療業務委員長・ガイドライン委員長)
中村栄男(名古屋大学高次医用科学講座臓器病態診断学教授、学会理事)
大島孝一(久留米大学医学部病理学教室教授、学会学術評議員)

・ 日本血液学会  
得平道英 (埼玉医科大学総合医療センター血液内科教授)
伊豆津宏二(国立がん研究センター血液腫瘍科長)
松岡 広  (神戸大学医学部附属病院腫瘍・血液内科准教授)

・ 日本リウマチ学会
山本一彦(理化学研究所統合生命医科学研究センター・学会理事長)
鈴木康夫(東海大学医学部リウマチ内科学特任教授)
針谷正祥(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター
リウマチ性疾患薬剤疫学研究部門特任教授、疫学・薬剤安全性小委員会委員長)