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日本リウマチ学会からのお知らせ

HBVに関する報道について

 昨今の報道において、リウマチ患者における肝炎ウイルスの再活性化の問題が取り上げられております。
 患者様、ご家族の方、一般の方に本件を正しくご理解頂き、安心な治療を受けて頂くために、日本リウマチ学会では以下のQ&Aを用意いたしましたので、参考にしてください。

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平成23年9月12日
一般社団法人日本リウマチ学会
理事長 宮坂 信之

Q1.B型肝炎ウイルスの再活性化とはどのようなことですか?

A. B型肝炎ウイルスに感染すると、多くの方では肝炎の症状を起こさずにウイルスは体内から排除され、なおります(治癒)。また、一部の方では、急性肝炎を発症した後になおります。このように、B型肝炎ウイルス感染がなおった方を既往感染者と呼び、この状態を俗に治癒肝炎といいます。しかし、既往感染者でも、B型肝炎ウイルスの遺伝子の一部が肝臓の細胞中に残ってしまうことが分かってきました。一方で、B型肝炎ウイルスに感染後、ウイルスが完全に排除されず、肝炎を発症しないまま体内にウイルスを保有し続ける場合があります。このような方を持続感染者(キャリア)と呼びます。これらの既往感染者やキャリアが、化学療法や免疫抑制療法を受けている間あるいは終了後に、血中のB型肝炎ウイルスが検出されるようになる、あるいはウイルス量が増加してくる場合があり、これをB型肝炎ウイルスの再活性化と呼びます。血中のB型肝炎ウイルス量が十分に増加すると、肝炎を発症する場合があります。このうち、劇症肝炎とは急速に肝不全に至る肝炎を指しますが、すべての肝炎発生例が劇症化するわけではなく、実際にはきわめてまれです。


Q2.キャリアと既往感染者はどのように診断するのですか?

A. いずれも血液検査で診断します。HBs抗原が陽性であればキャリア、HBc抗体、HBs抗体のいずれかが陽性であれば既往感染と診断します。ただし、B型肝炎ワクチン接種者ではHBs抗体が陽性になるので、注意が必要です。これらの検査が陽性の場合には、B型肝炎ウイルスのDNA量を調べるなどのさらに詳しい検査をします。


Q3.今回の新聞で報道されたような、治癒肝炎からの劇症化は、生物学的製剤を使った関節リウマチ患者では、どのくらいの頻度でおこりますか?

A. 現在までに、わが国では10万人以上の関節リウマチ患者が生物学的製剤を受けました。これらの方の約7~8割は副腎皮質ステロイドを、5~6割はメトトレキサートを使用しています。その中で、B型肝炎ウイルスの既往感染者からの劇症肝炎の発症が確認されたのは、2010年に報告された1例のみです(0.001%以下)。この患者さんも生物学的製剤のほかに、副腎皮質ステロイド、メトトレキサートなどを使用しており、どの薬剤が原因で発症したかは科学的な結論はでていません。生物学的製剤で起きたと断定した一部新聞の報道は、医学的に間違っており、訂正が必要です。


Q4.関節リウマチ患者では、キャリアと既往感染患者でB型肝炎ウイルス再活性化の危険性は
違いますか?

A. B型肝炎ウイルスの既往感染者とキャリアを区別して考えることが大切です。質問3でお答えしたように、関節リウマチではB型肝炎ウイルス既往感染者からの再活性化により劇症肝炎が発症することは非常にまれです。たとえ関節リウマチ治療中にB型肝炎ウイルスの再活性化が起きた場合でも、抗ウイルス薬で治療することによってウイルス量は減少・正常化します。一方、キャリアの場合には、すでに血中にウイルスが検出される状態ですので、再活性化が起きた場合にウイルス量が多くなり、肝炎を発症しやすくなります。日本リウマチ学会では、キャリアを含むB型肝炎ウイルス感染者に対しては生物学的製剤を投与すべきではないことをガイドラインなどで示してきました。あらかじめキャリアであるとわかっている場合は、関節リウマチの治療前にかならず主治医に申告していただく必要があります。またキャリアと診断された場合には、あらかじめ肝臓の専門医による抗ウイルス薬による治療を行ったのちに、関節リウマチの治療を開始することを検討します。


Q5.生物学的製剤の治療中に、どうやって肝炎の発生をモニタリング(監視)しますか?

A. 一般的には、外来で行う血液検査で肝機能検査値の推移を調べます。キャリアや既往感染者では、必要に応じて、B型肝炎ウイルスのDNA量を追加で調べる場合もあります。ただし、この検査のキャリアや既往感染者に対する保険適応はまだ承認されていません。


Q6.リウマチの治療に使う他の薬剤でもB型肝炎ウイルス再活性化の可能性はありますか?

A. メトトレキサートをB型肝炎ウイルスキャリアに投与した場合に肝炎や劇症肝炎を発症する症例が報告されています。したがって、メトトレキサートの添付文書では、B型肝炎ウイルスキャリアへの対応が「重要な基本的事項」として記載されています。日本リウマチ学会では、「関節リウマチ診療におけるメトトレキサート診療ガイドライン」を公表し、肝障害を有する患者は投与禁忌、キャリアはメトトレキサート投与を極力避ける、抗ウイルス薬による治療を先行させることなどを明記しています。


Q7.生物学的製剤とB型肝炎再活性化の問題に関して、日本リウマチ学会ではどのように対応
していますか?

A. 日本リウマチ学会では、「関節リウマチに対するTNF阻害療法施行ガイドライン」、「関節リウマチに対するトシリズマブ使用ガイドライン」、「関節リウマチに対するアバタセプト使用ガイドライン」を公表し、キャリアを含むB型肝炎ウイルス感染者に対しては生物学的製剤を投与すべきではないことを示してきました。
 また、「B 型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」を作成し、学会ホームページ上に公開して、学会員からのパブリックオピニオンを収集中です。この提言では、リウマチ性疾患患者におけるHBVの再活性化を防止するために現時点までに得られた科学的エビデンスをもとに、B型肝炎ウイルスキャリア・既往感染患者の診断、モニタリング、治療、日本肝臓学会専門医との連携などに ついてリウマチ治療医を対象に具体的な指針を示しています。
 なお、生物学的製剤の添付文書には、B型肝炎ウイルスキャリアへの対応が「重要な基本的事項」として記載されています。