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日本リウマチ学会からのお知らせ

新年の抱負

日本リウマチ学会会員各位

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
 グローバルには関節リウマチ治療のパラダイムシフトが起こり、画期的な治療成果が挙がっていることは皆様ご存じの通りです。しかし、グローバルに起こっていることが必ずしも我が国では十分に行われているとは限りませんし、「日本の常識は世界の非常識」となっては困ります。日本リウマチ学会としては、グローバルスタンダードに合致した学会となるべく、そして社会に対して説明責任を果たすことができる開かれた学会であるべく、本年度は下記の目標を掲げて更なる発展に向けて邁進をしていきたいと存じております。

1.会員資格の拡充

 これまで日本リウマチ学会の会員資格は「当該年度の会費を添えて本会所定の様式による申込みをし、理事会の承認を得た医師及び医療研究者」でしたが、医療研究者の定義が明確になされておらず、正会員のほとんどは医師でした。しかし、当学会を社会に開かれた存在とするためには、基礎研究者、看護師、薬剤師などリウマチ性疾患に興味を持ち、その日常診療や研究に従事している人たちを広く取り込む必要があると考えられます。また、’From Bench to Clinic’, ‘From Clinic to Bench’を可能にするためには、幅広い研究者の参画を必要とします。このため、会員資格を「医療研究者は,大学等の研究施設で医療研究に従事する者のほか,リウマチ専門医の指導のもとでリウマチ性疾患研究あるいは診療に従事する者等を含むものとする」と定義することとし、評議員2名の推薦があれば会員となることを可能にしたいと考えております。すでに理事会にて本案は承認されており、次期学術集会の際の社員総会に諮る予定です。また、会員資格の拡充に引き続き、リウマチ性疾患患者に最良の薬物治療環境を提供することを目標に行動するリウマチ治療コーディネーター制度の確立も視野においております。

2.教育研究事業の充実

 関節リウマチの治療のアンカードラッグとしてメトトレキサート(MTX)が使用されるようになってきたこと、さらにMTX効果不十分例に生物学的製剤が使用されることによって寛解導入及び関節破壊進行阻止が可能となりました。しかしその一方で、MTXや生物学的製剤使用時の有害事象の発生も注目されており、その適正使用については日本リウマチ学会として重大な関心を持っております。このような状況下において、当学会として下記の教育事業を新たに立ち上げる予定です。

 1) 診療ガイドライン作成事業  
 すでに当学会では,リウマチ性疾患治療薬検討委員会、生物学的製剤使用ガイドライン策定小委員会、MTX診療ガイドライン策定小委員会、リウマチ疫学調査研究小委員会、小児リウマチ調査検討小委員会等々を立ち上げ、その適正使用をめざして診療ガイドラインの作成などの調査研究に努めているところです。しかし、このようなガイドライン作成に関してはsystematic literature review (SLR)という方法を採用し、エビデンスレベルに基づいて作成するのがグローバルスタンダードとなってきております。このため、当学会においてもこのようなやり方を採用すべく、山中寿教授(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)を中心にして若手教育事業を本年度中に立ち上げる予定にしております。
 2) 関節リウマチ新分類基準検討事業
 2009年10月に米国フィラデルフィアで開催されたアメリカリウマチ学会年次集会において、アメリカリウマチ学会(ACR)とヨーロッパリウマチ学会(EULAR)との合同によるRA予備診断基準が発表されました。この診断基準作成の根底にあるのは、RAをできるだけ早期から診断し、持続的関節炎あるいは骨びらんを来たす可能性の高い症例に対してメトトレキサート(MTX)を用いて治療することにより、関節破壊を阻止しようという画期的な考え方です。しかし、我が国との間に存在する診療環境の違いや人種差などを考慮すると、当学会としても早急に本予備診断基準の妥当性を検討することが必要不可欠と考えます。このため、昨年末より新分類基準検討委員会(委員長:竹内 勤慶応大学教授)を発足させることとなりました。
 3) 関節リウマチ超音波標準化事業
 関節炎の診断及び評価において、画像診断なかでも関節超音波検査は重要な位置を占めるようになりつつありますが、標準化という点に多大の問題があるのが現状です。このため、(1)関節リウマチの診断および疾患活動性評価における超音波検査を用いた撮像方法および評価方法の標準化を図る、(2)標準化した超音波検査を用いた多施設共同研究により、リウマチ診療における超音波に関する新規エビデンスを構築する、(3)国内でのリウマチ診療における超音波検査の普及および技術の向上を図り、リウマチ診療の質を向上させる、という目的にて、昨年末より関節リウマチ超音波標準化委員会(委員長:小池隆夫北大教授)を立ち上げ、関節リウマチ超音波検査の標準化を図ることになりました。なお、関節リウマチ超音波検査標準化に引き続き、関節リウマチ超音波検査の実際を習得する教育研修事業の展開を予定しております。
 4) 若手医師研修事業
 これまで日本リウマチ学会としては、若手医師育成の目的で国内外の留学を奨励する制度を有しておりませんでした。本年度以降に国際委員会(委員長:山本一彦東大教授)で検討し、アメリカリウマチ学会(ACR)あるいはヨーロッパリウマチ学会(EULAR)と若手交流を可能にする制度の設立を図り、グローバルに通用する若手医師及び研究者の育成に努めたいと思います。
 5) 専門医研修事業
 専門医研修カリキュラムは、リウマチ性疾患の病態、診断、治療、管理、保健と福祉など幅広い問題についての知識、技能、態度を習得し、適切かつ安全なリウマチ性疾患の診療を提供できる専門医としての能力を賦与すること、ならびにそれらを自ら継続的に学習し、臨床的能力を維持できる医師を養成することを目標としています。このたび、リウマチ学の急速な進歩に対応すべく専門医制度を改革することになり、専門医制度委員会(委員長:田中良哉産業医大教授)では、(1)一般的目標の設定、(2)研修の方略・到達要求レベル・到達目標レベル・経験症例数の設定、(3)ローテーション研修などを導入すること、などを含めた専門医研修新カリキュラムと研修手帳についての改訂作業を昨年度より進めて来ました。すでに理事会にて本案は承認されており、次期学術集会の際の社員総会に諮り、これらを実施に移す予定です。

3. 診療環境整備事業

 これまで日本リウマチ学会が関節リウマチにおけるメトトレキサート(MTX)成人用量増量に向けて長年努力をしてまいりましたのはご存じの通りです。2008年11月に当学会から厚生労働省に提出した研究報告書「MTXの週8mgを超えた使用の有効性と安全性に関する研究:日本の3つのRA患者のコホート(IORRA, REAL, NinJa)研究とエタネルセプト市販後全例調査のデータベースの解析」において、「MTXは必要に応じて週16mgまで増量することにより、RA治療の有効性は向上し、安全性には有意の変化は認められない」という結論を厚生労働省並びに医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提示いたしました。その結果、厚生労働省からPMDAへの指示により、現在、公知申請に向けてPMDAとワイス社との協議が行われております。今後、承認へと進むことを期待しておりますが、本問題はすでに当学会の手を離れており、今後どの程度速やかに承認されるかはワイス社の努力にかかるところが大です。したがって、学会員ともどもその進展を注意深く見守りたいと思います。

4. 利益相反(COI)マネジメント整備事業

 日本リウマチ学会が主催する学術講演会や刊行物で発表される研究成果には、各種のリウマチ性疾患を対象とした診断・治療・予防法開発のための臨床研究や、新規の医薬品・医療機器・医療技術を用いた臨床研究が数多く含まれており、その推進には製薬企業、ベンチャー企業などとの産学連携活動(共同研究、受託研究、技術移転・指導、奨学寄附金、寄付講座など)が大きな基盤となっています。また、日本リウマチ学会では、一般的な臨床研究の他、新規治療薬の市販後調査や各種ガイドラインの策定などを重要な事業としていますが、これらは必然的に利益相反状態を生じる可能性を孕んでいます。このため、当学会においても利益相反マネジメント委員会(委員長:長澤浩平佐賀医大教授)を新たに設置し、会員に本学会事業において利益相反状態にあるスポンサーとの経済的な関係を一定要件の基に開示させることにより、会員の利益相反状態を適正にマネジメントし、社会に対する説明責任を果たすために本学会共通の利益相反指針を策定することをめざしています。本年度は、そのために利益相反指針と細則を定める予定にしております。

 以上、日本リウマチ学会としての本年度の方針をお示し致しました。当学会がさらに社会に開かれた存在となり、透明性の高い説明責任の果たせる学術団体となるべく、今後とも努力を重ねる所存です。
 皆様のますますのご指導とご協力をお願い致します。

一般社団法人日本リウマチ学会 
理事長 宮坂信之