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市販後調査のためのベリムマブ適正使用ガイドライン

ベリムマブ(遺伝子組換え)は、可溶型Bリンパ球刺激因子[BLyS、別名:B cell activating factor belonging to the TNF family(BAFF)及びTNFSF13B]に選択的に結合し、その活性を阻害する完全ヒト型抗BLySモノクローナル抗体製剤である。点滴静注用製剤と皮下注製剤は2017年9月に本邦で全身性エリテマトーデス(SLE)の適応が承認された。点滴静注用製剤は欧米において2011年に承認されており、皮下注製剤については、米国において2017年7月に承認された。


ガイドラインの目的

ベリムマブは、全身性エリテマトーデス患者の臨床症状の改善、再燃抑制、ステロイド減量効果が臨床試験により証明された薬剤であるが、投与中に重篤な有害事象を合併することがある。本指針は国内外で実施された臨床試験の結果を基に、市販後調査におけるベリムマブ投与にあたって、その適応や、有害事象の予防・早期発見・治療のための注意点を示し、薬剤の適正使用を促すことを目的とした。
実際にベリムマブを使用するときは、本ガイドラインのみではなく、添付文書を十分参照いただきたい。
本ガイドラインは、現時点における臨床試験の成績に基づき作成されたものである。市販後調査を実施中にも改訂されることがある。今後、市販後臨床試験調査の成績を反映した[実地臨床における適正使用のためのガイドライン]を策定する予定である。


対象患者

  1. 過去の治療において、ステロイド、免疫抑制薬等による全身性エリテマトーデスに対する適切な治療を行っても、疾患活動性を有する患者を本剤の追加投与の対象とする。
  2. 抗核抗体または抗dsDNA抗体が陽性である全身性エリテマトーデス患者を対象とする。
  3. 重篤な臓器病変を伴わないが疾患活動性を有する患者に対して、ステロイド初期投与量の減量を目的に本剤を投与することに十分なエビデンスはないが、慎重にリスクベネフィットを考慮して適応を判断する。
  4. 寛解維持期の患者においても、ステロイドや他剤の免疫抑制剤の減量を目的として本剤を投与することに十分なエビデンスがないが、慎重にリスクベネフィットを考慮して適応を判断する。

用法・用量
  • 点滴静注用
  • 通常、成人にはベリムマブ(遺伝子組換え)として、1回10mg/kgを初回、2週後、4週後に点滴静注し、以後4週間の間隔で投与する。
  • 皮下注用
  • 通常、成人にはベリムマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを1週間の間隔で皮下注射する。

使用上の注意点
  1. 全身性エリテマトーデス患者の診療に十分な経験のある医師が投与すること
    1) リウマチ専門医、リウマチ指導医を取得し、SLE治療の経験がある
    2) リウマチ性疾患を専門とし、難病指定医、協力難病指定医を取得し、SLE治療の経験がある
    3) 十分なSLE治療の経験があり、上記に該当する医師と適切な連携のもと、SLE治療を行っている
    4) 上記1)、2)に該当する医師の直接の指導のもと、SLE治療を行っている
  2. 本剤による治療反応は、通常投与開始から6ヶ月以内に得られる。6ヶ月以内に治療反応が得られない場合は、本剤の治療計画の継続を慎重に再考すること。
  3. 本剤の18歳未満の患者への投与は、有効性および安全性が確立していない
  4. 臨床試験において、重症のループス腎炎、重症の神経精神ループス患者、その他の重篤な臓器病変に対する有効性、安全性は検討されていない。
  5. ほかの生物学的製剤またはシクロホスファミド静注剤との併用に対する有効性及び安全性は検討されていない。

投与禁忌
  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 重篤な感染症の患者
  3. 活動性結核の患者

慎重投与:次の患者には慎重に投与すること
  1. 感染症の患者または感染症が疑われる患者
  2. 結核の既往歴を有する患者
  3. うつ病、うつ状態またはその既往歴を有する患者、自殺念慮又は自殺企図の既往歴を有する患者

注意すべき有害事象

1. 重篤な過敏症
1) ショック、アナフィラキシー(血圧低下、蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難等)等の重篤な過敏症があらわれることがある。国内外の臨床試験での発現率は0.6%であり、初回及び2回目の投与時に過敏上の発現する頻度が高く、それ以降は低下する傾向にあった。
2) 蕁麻疹などの皮膚症状、消化器症状、呼吸困難などの呼吸器症状等のアナフィラキシー反応の前駆症状がみられた場合には本剤の投与を中止し適切な処置を行うこと。
3) 過敏症反応(発疹、悪心、疲労、筋肉痛、頭痛および顔面浮腫等)の発現が遅れてあらわれることがある。観察を十分に行い、以上が認められた場合にはただちに使用を中止し、適切な処置を行うこと。

2. 感染症
全身性エリテマトーデス自体が感染のリスクが高く、免疫抑制薬の使用も感染症のリスクとなる。また、ベリムマブはBリンパ球刺激因子(BLyS)を抑制し、B細胞及び免疫グロブリンを減少させるという作用機序を有するため、感染症への感受性を高める可能性がある。静脈内投与における国内外の臨床試験では20.0%、皮下投与における臨床試験では18.7%で感染症が認められ、死亡に至った例も報告されている。患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

1) 結核
本剤の臨床試験では結核のリスク増加は示されていないが、静脈内投与および皮下投与における国内外の臨床試験では患者が活動性結核を発症している場合、またはその時点において何らかの慢性感染症に対する治療を受けていた場合は除外したため、本剤による活動性結核への影響は検討されていない。
  • 本剤投与に先立って問診、胸部X線検査、インターフェロン-γ遊離試験またはツベルクリン反応検査、胸部CT検査(適宜)を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。
  • 結核の既往歴を有する場合および結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。
  • 胸部X線写真で陳旧性肺結核に合致する陰影を有する患者、インターフェロン-γ遊離試験やツベルクリン反応が陽性の患者、結核患者との濃厚接触歴を有する患者は、原則として抗結核薬を予防投与したうえで、本剤を投与すること。
  • 結核の活動性が確認された場合は、本剤を投与せず、結核の治療を優先すること。

2) B型肝炎およびB型肝炎ウイルス再活性化
静脈内投与および皮下投与ともに、国内外の臨床試験での本剤投与群においてB型肝炎およびB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化の報告はないが、海外市販後に急性B型肝炎が報告されている。HBV感染者(キャリアおよび既往感染者)に対しては、日本リウマチ学会による「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制法に関する提言」および日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」を参考に対処する。

3) 進行性多巣性白質脳症(PML)
本剤の静脈内投与および皮下投与における国内外の臨床試験からのPMLの報告はないが、海外市販後においてPMLの発症が報告されている。本剤の治療期間中および治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。

3. 間質性肺炎
静脈内投与における国内外の臨床試験での発現率は0.1%であり、皮下投与における臨床試験では発現は認められなかった。

  • 発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部X線検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、本剤投与を中止するとともにニューモシスティス肺炎との鑑別診断(β-D-グルカンの測定等)を考慮に入れ、適切な処置を行うこと。
  • 間質性肺炎の既往(合併症含)がある患者では再燃のおそれがあるので、定期的に問診等を行うこと。

4. 悪性腫瘍
本剤との因果関係は明らかではないが、悪性腫瘍(非メラノーマ性皮膚癌を除く)の発現率は、第Ⅲ相国際共同試験のBEL113750試験において、本剤10mg/kg群で0.2/100人年, プラセボ群で0/100人年であった。第Ⅲ相海外試験のBEL110751試験、BEL110752試験を含む併合解析では、本剤10mg/kgを投与された患者において悪性腫瘍(非メラノーマ 性皮膚癌を除く)は報告されなかった。また、皮下注製剤の第Ⅲ相国際共同試験のBEL112341試験における悪性腫瘍(非メラノーマ性皮膚癌を除く)の発現率は、本剤200mg群で0.4/100人年、プラセボ群で0.4/100人年であった。悪性腫瘍(非メラノーマ性皮膚癌を除く)の発現率は、第Ⅲ相国際共同試験において本剤10mg/kg群で0.2/ 100人年であった。

5. 高齢者
本剤の臨床試験において、65歳以上のデータは限られている。一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。

6. ワクチン接種
帯状疱疹(水痘)、麻疹、風疹、おたふくかぜ、BCGなどの生ワクチン接種は、ベリムマブ投与中は禁忌である。また, 生ワクチン接種は、本剤投与中止後、3~6ヶ月の間隔を空けることが望ましい。接種に際しては併用薬剤や年齢、肝、腎機能障害など患者背景を考慮する必要がある。特に妊娠後期に本剤を投与した場合は、乳児の生ワクチン接種で感染のリスクが高まる可能性があるので、少なくとも生後6か月頃までは生ワクチンを接種しないことが望ましい。

7. 妊婦、産婦、授乳婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

  

一般社団法人日本リウマチ学会
調査研究委員会
全身性エリテマトーデス診療ガイドライン作成小委員会
委員長 渥美達也
(2017.11.12)