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日本リウマチ学会からのお知らせ

東北関東大地震被災者診療に携わる医師の方々へ -リウマチ・膠原病診療10箇条-

 このたびは東北関東大地震に被災された方々に対しまして、日本リウマチ学会として心よりお見舞い申し上げます。皆様におかれまして、一日も早い復旧が行われますよう心よりお祈りしております。
 日本リウマチ学会では、関節リウマチを始めとするリウマチ性疾患あるいは膠原病(全身性エリテマトーデス、血管炎症候群、多発性筋炎/皮膚筋炎、強皮症、高安病など)の診療に関する重要な点を10か条に抜粋し、Q&Aの形で作成致しました。このQ&Aが、被災者の診療に携わる医師の参考になれば幸いです。

Q1. ステロイド服用を急に中止しても大丈夫でしょうか?
 ステロイド(プレドニン、メドロール、デカドロン、リンデロンなど)を服用していると、「視床下部—下垂体—副腎」の働きが抑制をされます。このため、急にステロイドの服用を中止すると、症状がかえって増強することがあります。これを「反跳(リバウンド)現象」と呼びます。しかし、ステロイド服用が短期間の場合には、ステロイドを再開するとじきに症状は改善します。
 一方、ステロイドをプレドニゾロン換算で総量1000mgを超えて服用している場合には、「視床下部—下垂体—副腎」の抑制が長期間続くために副腎が萎縮してしまいます。このような場合にステロイドを中止すると、副腎はもはやステロイドホルモンを産生することができないために、急性欠乏症状が起こります。最初は全身倦怠感、発熱、嘔気、嘔吐などの症状がみられます。さらに放置すると、血圧が低下し、ひどい場合にはショックに陥って死亡することもあります。検査成績上ではCRPが急増するのが特徴です。このような状態を「離脱症候群」と呼び、緊急処置が必要な状況です。
 離脱症候群に対しては、速効性のヒドロコルチゾン(ソルコーテフ、ハイドロコートンなど)100mgを生理食塩水とともに4〜6時間毎に点滴静注をすることによって、症状は劇的に改善します。症状が軽快したら、ステロイドの内服を開始させて下さい。
 ステロイドは一般の薬局で購買をすることはできず、医師の処方箋が必要です。患者さんの手元にステロイドがない場合には、最寄りの災害拠点病院などで処方を受けるように指示してください。

Q2. 手元にプレドニンはないけれど、他のステロイドでも代用可能でしょうか?
 ステロイドの内服薬には、プレドニン、メドロール、リンデロン、デカドロンなどいろいろな種類があります(表1)。その効力や血漿半減期はそれぞれ違います。しかし、どれも1錠中のステロイド量はほぼ等量です。したがって、たとえ手元にプレドニンがなくても、他のステロイドで代用することができます。

表1 ステロイドの種類

ステロイド 商品名
血漿半減期(時間)
等価投与量(mg)
コルチゾン
コートリル 1.2〜1.5 25
ヒドロコルチゾン  ソルコーテフ 1.2〜1.5 20
サクシゾン 1.2〜1.5 20
プレドニゾロン プレドニン 2.5〜3.3 5
プレドニゾロン 2.5〜3.3 5
メチルプレドニゾロン 2.8〜3.3 4
デキサメサゾン デカドロン 3.5〜5.0 0.5〜0.75
ベタメサゾン リンデロン 3.3〜5.0 0.5〜0.75
パラメタゾン パラメゾン 5.0〜 2

Q3. 嘔吐でステロイドが飲めないけれど、どうすればよいのでしょうか?
 ステロイドが嘔吐で内服できないとき、服用量の25~50%増の用量を生理食塩水などとともに点滴で投与して下さい。嘔吐が収まったら、内服で再開して下さい。

Q4. ひどい下痢をしているが、ステロイドの服用はどうすればよいのでしょうか?
 ひどい下痢をしている場合には、内服をしたステロイドが吸収をされない可能性があります。この場合には、服用量の25~50%増の用量を生理食塩水などとともに点滴で投与して下さい。下痢が収まったら、内服で再開して下さい。

Q5. 高熱が出ているのですが、ステロイドの服用量を変更する必要があるでしょうか?
 風邪やインフルエンザなどの場合には、ステロイドの服用量は変更する必要はありません。むしろ、熱の原因が何によるのかを確認をすることがまず大切です。

Q6. 緊急で手術をしなければならないのですが、ステロイドの投与はどうすればよいでしょうか?
 緊急手術が必要な場合には、内服を中止し、服用量の25~50%増の用量を生理食塩水などとともに4〜6時間毎に点滴で投与して下さい。経口摂取ができるようになったら、ステロイドの内服も再開して下さい。

Q7. 消炎鎮痛剤がないけれど、病気が悪化しないでしょうか?
 消炎鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬)の使用を中止すると、痛みなどの症状が多少悪くなることはあります。しかし、それほどひどくはなりませんし、ステロイド中止の際にみられるような反跳現象や離脱症候群も起こりません。これは内服薬でも座薬でも同じです。

Q8. 抗リウマチ薬は中止しても大丈夫でしょうか?
 関節リウマチの治療に用いられる抗リウマチ薬(リマチル、アザルフィジン、メトトレキサート、プログラフなど)は、たとえ服用をやめてもすぐに症状が悪くなることはありません。一般には2週間以内に服用を再開すれば、症状が増悪することはありません。

Q9. 生物学的製剤は中止しても大丈夫でしょうか?
 関節リウマチの治療に用いられる生物学的製剤は、たとえ中止してもすぐに症状が増悪することはありません。点滴静注で用いるアクテムラ、オレンシアなどの場合には、効果は一般には4週間持続します。同じく点滴静注で用いるレミケードの効果は6〜8週間持続します。皮下注射で用いるエンブレルの効果持続は3〜7日、ヒュミラでは14日です。したがって、たとえ投与が中断しても急激に症状が悪くなることはありません。

Q10. 免疫抑制剤は中止しても大丈夫でしょうか?
 膠原病の治療に用いられる免疫抑制薬(エンドキサン、アザニン、イムラン、ネオーラル、プログラフ、ブレディニン、メソトレキセートなど)は、服用を中止しても症状はすぐに悪化せず、その効果は約2週間継続します。ステロイド中止の際にみられるような反跳現象や離脱症候群も起こりません。

注:本文中では、医療現場の医師にあえてわかりやすくするために、薬の一般名を用いずに商品名を用いたことをお断り致します。 文献: 1. ステロイドがわかる本.宮坂信之編著 法研 2008. 2. 膠原病がわかる本.宮坂信之著 2007. 3. 正しい生物学的製剤の使い方.宮坂信之編集 2009.

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平成23年3月22日 
一般社団法人日本リウマチ学会
 理事長 宮坂 信之