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利益相反

一般社団法人日本リウマチ学会における事業活動の利益相反(COI)に関する指針

 (2015年11月15日一部改正)

 一般社団法人日本リウマチ学会(Japan College of Rheumatology、 JCR)は、昭和32年(1957年)日本リウマチ協会として発足し、リウマチ性疾患に関する基礎的、臨床的な研究を進展させ、かつ社会的要請に応えるための各種事業を展開することにより、リウマチ学の進歩普及を図り、もってわが国の学術の発展に寄与することを目的としている。会員数は9,880名に達し(平成27年3月1日現在)、さらに増加傾向にある。事業内容としては、学術集会の開催、学会機関紙(Modern Rheumatology)の発行、教育研修の実施、専門医等の認定、海外の関係諸学会との連携活動、そして最近では生物学的製剤のガイドラインの作成や新薬の市販後調査などがあり、学術および社会活動を幅広く行なっている。

 わが国では、科学技術創造立国を目指して 1995年に科学技術基本法を制定、1996年に科学技術基本計画が策定され、国家戦略として産学の連携活動が強化されてきた。20世紀後半以降の医学・医療の進歩は目覚ましく、医学における研究対象も、個体から臓器、細胞、分子へと移り、さらに遺伝子異常と疾病との関連や再生医学へと展開し、これらを基に未知の病態の解明とともに、創薬への応用、そして全く新しい概念に基づく治療法、予防法の開発にも応用されている。医学研究における成果を社会、患者に適切に還元していくことは、我が国の国民が安心・安全・快適な生活を享受する上で、極めて重要であると同時に、教育・研究の活性化や経済の活性化を図る上でも大きな意義を持つ。

 日本リウマチ学会が主催する学術講演会や刊行物で発表される研究成果には、各種のリウマチ性疾患を対象とした診断・治療・予防法開発のための医学研究や、新規の医薬品・医療機器・医療技術を用いた臨床研究が数多く含まれており、その推進には製薬企業、ベンチャー企業などとの産学連携活動(共同研究、受託研究、技術移転・指導、奨学寄附金、寄付講座など)が大きな基盤となっている。

 産学連携による医学研究(基礎研究、臨床研究、臨床試験など)が盛んになればなるほど、公的な存在である大学や研究機関、学会等が特定の企業の活動に関与することになり、その結果、教育・研究・指導・広報といった学術機関としての責任と、産学連携活動に伴い生じる個人が得る利益とが衝突・相反する状態が必然的、不可避的に発生する。こうした状態が「利益相反(conflict of interest、 : COI)」と呼ばれるものである。特に日本リウマチ学会では一般的な医学研究の他、新規治療薬の市販後調査や各種ガイドラインの策定などを重要な事業としているが、これらは必然的にCOI状態を生じる可能性を孕んでいる。このCOI状態を適切にマネジメントしていくことが、産学連携活動を適切に推進する上で乗り越えねばならない重要な課題となっている。また、他の領域の産学連携研究とは異なり、医学研究の対象・被験者として患者、健常人などの参加が不可欠である。医学研究に携わる者にとって、資金及び利益提供者となる企業組織、団体などとのCOI状態が深刻になればなるほど、被験者の人権や生命の安全・安心が損なわれることが起こりうるし、研究の方法、データの解析、結果の解釈が歪められる恐れも生じる。また、適切な研究成果であるにもかかわらず、公正な評価COIがなされないことも起こりうる。しかし、過去の集積事例の多くは、産学連携に伴うCOI状態そのものに問題があったのではなく、それを適切にマネジメントしていなかったことに問題があるとの指摘がなされている。近年、国内外において、多くの医学系の施設や学術団体は臨床研究の公正・公平さの維持、学会発表での透明性、かつ社会的信頼性を保持しつつ産学連携による医学研究の適正な推進を図るために、医学研究にかかるCOI指針を策定し、適切なCOIマネジメントによって、正当な研究成果を社会へ還元する努力を重ねている。

 一方、2010年3月、医療保健改革法(Patient Protection and Affordable Care Act of 2009)が米議会で承認され、その中のSunshine条項に各種公的保健でカバーされる医薬品、医療機器、生物製剤、医療用品を製造する米国の製造業者は医師、大学病院(教育研究病院)に対し提供された物品や支払い金額に関する報告義務を法的に課し、保健社会福祉省は2013年9月にホームページでその内容を公開するという規則を盛り込んでおり、報告漏れについては罰金刑が設けられている。2011年1月、日本製薬工業協会も米国での動きを受けて同様な趣旨の「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表し、法的規制はないが、2013年度からホームページによる情報公開を各企業に求めている平成25年度以後に支払われた原稿執筆料等が個人名、件数および総額について平成26年7月から順次公表されている。研究者のCOI状態は開示から公開へと大きく変化しつつあり、日本リウマチ学会においてもCOIマネジメントに関する適切な対応が求められる。

 近年、世界的に動向として、基礎的なシーズ探索研究から臨床への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)が各国ともに国策的な取り組みとして推進されている背景から、COI マネジメントの研究対象が、人間を対象とした臨床研究や臨床試験(治験を含む)に限定されず、産学連携による基礎的な生命科学研究にまで拡大されてきており、企業・営利を目的とする法人・団体などとの産学連携にて実施している基礎研究者にも経済的なCOI 状態の自己申告書を提出させる傾向にある。そこで、本学会は、予防、診断および治療方法の改善、疾病原因および病態の理解の向上ならびに患者の生活の質の向上を目的として行われる産学連携の研究であって、生命科学研究や基礎医学研究から人間を対象とする臨床医学研究(個人を特定できる人由来の材料および個人を特定できるデータに関する研究を含む)、臨床試験までの研究を医学研究として定義し、COI マネジメントの対象と位置付ける。

 日本リウマチ学会におけるCOIマネジメントの考え方は,1)研究機関及び研究者は、産学連携にかかる医学研究の実施に関して医学性、倫理性、科学性の担保を前提に、利害関係にある企業、法人組織、団体からの外部資金(寄附金、研究助成金、契約による研究費等)、医薬品・機器、及び役務等の提供を公正にかつ適正に受け入れる。2)当該研究成果の質と信頼性を確保するために、提供された内容等の詳細情報をもとに予め管理し、臨床研究実施計画書、COI申告書および論文に適切に記載し公開する。3)第三者から疑義を指摘されれば、説明責任を果たすことを基本とする。

 日本リウマチ学会は役員就任および会員の発表に際しては、COI状態にある資金提供者との経済的な関係を一定要件のもとに開示させることにより、会員などのCOI状態を適正にマネジメントし、社会に対する説明責任を果たすために本学会共通のCOI指針を策定する。


平成27年11月15日
一般社団法人日本リウマチ学会
理事長 山本一彦
同 利益相反マネジメント委員会
委員長 金物壽久